例年になく穏やかな天候のもと,平成26年弥生朔日(土)午前10時より「第32回 平成25年度 花巻東高等学校 卒業証書授与式」が挙行された。
卒業生が会場の第1アリーナに入場しだすとともに,式会場にはこれまでにない緊張感と充実感に満ちた空気が漂いはじめたことが感じられる一瞬であった。
式が始まり,卒業生の一人ひとりが担任の先生方に呼名されると,3年間の喜怒哀楽を胸に秘めていた生徒たちがお世話になった人々と学舎を思い浮かべながら大きな声で返事と一礼をし,これまでの感謝の気持ちを表現するように静かに座り直していたが,その姿には何も言われなくても「分かっている」・「つながっている」という確かな学年団のまとまりが感じられるものであった。
このような学年団をもう一度形成しようとしても,この学年団が持っていたあの「空気」までを再現することはおそらく不可能であろう。「相手が海だったから,人を恨まずに済んだ」あの東日本大震災とともに入学してきた生徒たちである。高い山の頂上を見たら登れそうにないが,足元を見て,一歩一歩と進んできた。新しい未来への道を切り拓きたいから,変わる勇気を持ってきた子どもたちである。そして,たとえ評価に結びつかなくても,無理をしてでも学年団のために目立たない仕事をこつこつとこなして,生徒をサポートしてきた先生方が少なからずいた。すべては生徒を育て上げ,立派に卒業式の場に臨席させ得ることを考えて行動してきたからである。自分たちの夢が「何のために」・「誰のために」あるのかを認識し,その夢が叶ったことを噛み締めての卒業式であった。
本校初となるアスリート特進コースの卒業生のみならず,国公立大学合格をはじめ,文武両道を唱えてきた本校卒業生の進路は,新たな歴史を作った。その卒業生たちへの式辞では,「人は自然によって生かされている,支えがあってはじめて人になれる」という言葉や,「自分には自分にしか歩めない道がある」という松下幸之助氏の言葉を引用しながら校長先生は激励された。
式終了後には卒業生の保護者を代表し,壇上から降壇した河野純PTA会長より教職員に対して過分なる謝辞をいただいた。その言葉を受け,我々指導者も学識だけではなく人としてもさらに磨きを掛けなければならないと,さらなる未来へ自分を成長させることを誓っていた先生方もいたことだろう。
走馬燈のように流れる思い出は,卒業式とともに卒業生の心に再度刻み直されながら,未来に先回りをしてそれぞれの人生を輝かせてくれることだろう。
第32回 平成25年度 花巻東高等学校卒業生たちよ 頑張れ!
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